打撃指導に定評のある6人の名将が技術論を中心とした打撃論を存分に語っている『高校野球監督がここまで明かす!打撃技術の極意』(大利実/カンゼン)。その著書の中から今回は、明石商業高校・狭間善徳監督の章の一部分を紹介します。19年春夏ベスト4、近年多くの教え子をプロに輩出している監督は、どんな打撃指導をしているのでしょうか?狭間善徳の「打撃メソッド」とは? 1.バッティングも守備も基礎が大事 備え・間・タイミング・バランスは野球の基礎。これは、バッティング、守備の両方に共通する。基礎があっての基本であり、その上に応用がある。ここを疎かにしていると技術は身に付かない。 2.インハイを打てるように備える インハイは打つのが一番難しく、窮屈に打たなければいけないコース。前の肩(右バッターなら左肩)の高さのボール球を打てるように構えることが、結果的にいい打ち方につながる。 3.下半身は捻るが、上半身は真っすぐに 下半身と上半身を一緒に捻ってしまうと、後ろのヒジが抜けにくくなり、ドアスイングになりやすい。下半身は捻りながら、上半身は両肩を結んだラインをピッチャーに向けたままにすることでバッティングの精度、確率が上がる。 4.割れの作り方、タイミングの取り方は3種類 バッティングで重要な「割れ」「タイミングの取り方」はひとつの方法論だけでなく、それぞれ3種類ずつある。選手の適性に応じて、一番やりやすい方法を選択させ、感覚を養っていく。 5.ヘッドを利かせる工夫 グリップ側に支点を作ることでバットのヘッドが走り、ボールを押し込めるようになる。前の手を自分の体のほうに戻す、手の平でなく指で軽く握るなど、支点をうまく使うことが重要。「割れ」の作り方は3種類 →軸足に力をためて時間を調整するリリースの空間を目で見て、空間と空間の時間をうまく合わせていくには、「割れ」が必要になる。「手は後ろ(キャッチャー側)にいくけど、足は前(ピッチャー側)にいく。相反する動きが、『割れ』になります。これが、備え・間・タイミング・バランスで言うところのバランス。上と下を逆方向に動かしたり、行きながら待ったり、同時に2つ以上のことをやらなければいけないのが難しいところです」軸足に力をためた状態で、この割れを作る。軸足に力を感じておけば、前足を着く時間を調整することができるからだ。それが緩急の対応にもつながっていく。力をためるときに意識するのは、くるぶしの下あたり。母指球を意識すると、つまさき側に体重がかかることになり、インコースに対して、体が回りにくくなる。狭間監督によると、割れの作り方は3種類あるという。選手の適性を見ながら、アドバイスを送っている。「一番の理想は、自分が前に動くのに合わせて、バットを持った手を後ろに動かし、割れを作れること。これができるバッターが、一番理想であり、対応力がある。プロで言えば、福留孝介選手(阪神)がこのタイプです。これではうまく割れが作れない選手は、あえてヒッチを入れる。ヒッチを入れることで、軸足で待つ時間を作り出すことができ、ボールとの間合いを計れるようになります。ただ、自分から手を動かすことで、ブレが生まれやすいデメリットもある。タイミングが取れなくなったときに、戻すまでに時間がかかります」この2つのやり方で割れが作れない選手は、構えの段階で前ヒジを張って、グリップを最初から後ろに置く。これ以上後ろには引き切れないところまで引っ張り、あとは前に振り出せばいい状態にしておく。ただし、狭間監督曰く「対応力に欠けるので、あまりおすすめはしない」。相手バッターがこのタイプであれば、変化球中心に攻めていく。 タイミングの取り方も3種類 →カウントによって使い分ける割れの話にもつながってくるのが、タイミングの取り方だ。前足をどのように使うかによって、タイミングの取りやすさが変わってくる。明石商では、3種類の取り方を使い分けている。「ボールに、もっとも力を伝えられるのが、足を上げてタイミングを取ること。足を下ろした力を、ボールにぶつけることができます。ただし、足を上げることによって、着地までに時間ができる分、下ろすタイミングが難しい。時間を感じられない選手は、ストレートに差し込まれやすくなります」その次にあるのが、すり足か、低空飛行で足を上げること。高く足を上げないことで、ピッチャーとのタイミングを合わせやすくなる。そして、三番目はノーステップだ。あらかじめ、前足を踏み出した状態で構え、あとは後ろ足から前足への体重移動だけで打ちにいく。前に向かっていく動きを制限することで、さまざまなボールに対応できるようになる。ただし、バットを振る出力は小さくなる。「追い込まれたあとは、すり足やノーステップにして、ボールを体の中に入れるようにしています。相手の勝負球を頭に入れた中で、逆方向を意識しておく。バットを短く持てば、より近くまで引き付けることができる。胸を向けないで、バットを短く持って、内側から出す。この意識があれば、簡単には空振りしません」続きは本書から(書籍では写真を交えてより詳しく紹介されています)。 狭間善徳(はざまよしのり) 1964年生まれ。現役時代は明石南、日体大でプレー。1993年から明徳義塾中・高に赴任し、高校のコーチを5年間、中学の監督を13年間務め、全中を4度制覇。2007年の新チームから明石商の監督に就き、就任9年目の2016年センバツで甲子園初出場(ベスト8)を果たすと、2018年には夏初出場。2019年には春夏甲子園ベスト4に進出した。 著者:大利実(おおとし みのる) 1977年生まれ、横浜市港南区出身。港南台高(現・横浜栄高)-成蹊大。スポーツライターの事務所を経て、2003年に独立。中学軟式野球や高校野球を中心に取材・執筆活動を行っている。『野球太郎』『中学野球太郎』(ナックルボールスタジアム)、『ベースボール神奈川』(侍athlete)などで執筆。著書に『中学の部活から学ぶ わが子をグングン伸ばす方法』(大空ポケット新書)、『高校野球 神奈川を戦う監督たち』『高校野球 神奈川を戦う監督たち2 神奈川の覇権を奪え! 』(日刊スポーツ出版社)、『101年目の高校野球「いまどき世代」の力を引き出す監督たち』『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』(インプレス)、『高校野球継投論』(竹書房)、『高校野球界の監督がここまで明かす! 野球技術の極意』『高校野球界の監督がここまで明かす! 打撃技術の極意』(小社刊)などがある。2月1日から『育成年代に関わるすべての人へ ~中学野球の未来を創造するオンラインサロン~』を開設し、動画配信やZOOM交流会などを企画している。https://community.camp-fire.jp/projects/view/365384 関連記事 【履正社】名将によるバッティング上達メソッド!(岡田龍生 監督)2021.11.10 トレーニング 「高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意」長谷川菊雄監督|八戸工大一2021.10.25 トレーニング 「高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意」清水央彦監督|県立大崎2021.10.18 トレーニング 【三重・海星】葛原美峰アドバイザーの「投手攻略メソッド」とは?2021.11.5 トレーニング
元記事リンク:【明石商】名将によるバッティング上達メソッド!(狭間善徳 監督)