【藤沢翔陵】全体練習を重視。指導は必要最低限、選手自身の“気づき”を大切に

【藤沢翔陵】全体練習を重視。指導は必要最低限、選手自身の“気づき”を大切に

監督就任から12年目を迎えた川又浩明監督のもと、日々練習に励んでいる藤沢翔陵高校野球部。全体練習では可能な限りボールを使い、実戦に即したメニューを多く行う。今年の夏にベスト4入りを果たし、古豪復活への光も見えてきた伝統校の練習に密着した。できるだけ全体練習に時間を費やしたいかつては、100人を超える部員が所属する大所帯の時期もあったが、今は2年生12人、1年制27人と少数精鋭。「部員が少なくなって大変なことも多いですが、選手個々のモチベーションを保ちながら、いい練習ができてます」と川俣監督。全体練習では、オフシーズンであっても実戦に即した練習メニューを多く組んでいる。そこには、「グラウンドでは、全員が集まらなければできない練習メニューが多い。筋力トレーニングなども重要だとは思いますが、みんなが集まれるときは全体練習に時間を費やしたい」という考えがある。選手主導のスタイルが浸透している影響だろう、練習中選手同士で声を掛け合う場面が多く見られた。川俣監督が選手と直接話すことはほとんどない。細かい指摘をするのは、竹田和樹をはじめとしたコーチ陣だが、必要以上のことは指示していないように見えた。選手の自主性を重んじる練習スタイルが功を奏したこともあり、今年の夏には県でベスト4入りを果たした藤沢翔陵。川俣監督は、「常にベスト4、ベスト8に入れるチームにはなっていませんが、数年に1度は結果が出せている。まだまだ成長が必要ですが、思い描いた道は進んでいるかなと思います」と自信をのぞかせる。 練習中はとにかく選手同士が頻繁に声を掛け合う姿が多くみられた。  チーム力を大切に個々のレベルアップを図る 今年9月に行われた秋季大会ではベスト8。一定の結果を残したが、川俣監督は「今のチームは、これまでに比べても技術レベルは高くない」と厳しい評価を下している。「秋の大会は組み合わせにも恵まれた。だからこそ、選手の意識をさらにレベルアップさせないと」。選手たちも、現チームの現状を冷静に分析している。キャプテンを務める水野朝陽(2年)は、「自分たちは、個々の技術レベルは高くない。だからこそ、チーム力を大切にしていきたい。一日一日の練習をしっかり行いいいチームをつくっていきたいです」と力を込める。発展途上のチームをまとめる役割を託されている水野。そんな彼にキャプテンとして注意している点を聞いてみると、「自分の話がみんなに受け入れてもらえるように言葉選びを大切にしています。あと、いいプレーがでればみんなで褒め合い、悪いプレーがでたらみんなで指摘しし合うことも徹底してやっていけるように努力しています」と教えてくれた。水野は中学生時代、所属していたクラブチームの練習で藤沢翔陵のグラウンドを利用したことがあったという。その時、活気のいいチームだったので、ここで野球を続けたいと思ったことが、進路の決め手になったという。川俣監督の「いい環境で練習をさせてあげたい」という思いは、しっかりと根づいている。 キャプテンとしてチームをけん引している水野。 県ベスト4を成し遂げた先輩たちを超えられるか 野球に取り組む積極的な姿勢を感じさせてくれる選手が多いことも、藤沢翔陵の魅力だろう。1年の玉城巧望は、「父親や竹田コーチにはよく、野球の神様はいると言われていて、僕もそれを信じています。そのため、私生活が野球につながっていると考えるようになりました。普段の生活から礼儀正ししく、落ちているゴミを拾ったりと、野球の神様に見られても恥ずかしくないように学校生活を送るようにしています」と胸を張る。私生活も含めて野球と向き合う。これは、川俣監督が高校時代に部長から言われ衝撃を受けたという「お前たちは、商品なんだ」という言葉の本質をつくものだろう。最後に、来年に向けての目標をキャプテンの水野に聞いてみた。「今年、先輩たちと一緒にプレーさせてもらい、県ベスト4になるという経験をさせてもらったので、自分たちはそれを超えられるように、先輩たちよりもいいチームをつくり一丸となって戦いたいです」。一方、1年の玉城は「甲子園出場にふさわしいチームになるために、副キャプテンとしても自分が率先して行動することで、いい雰囲気をつくっていきたい」と答えたくれた。勝つチームをつくるにはどうすればいいか。監督、コーチだけでなく、選手たちもその課題に真剣に取り組んでいる姿勢が伺える藤沢翔陵の部員たちが、来年の春、そして夏の大会でどんな戦いを見せてくれるか、注目したい。 「自分に厳しくなれるように努力もしています」とも話す玉城。 (取材・文/松野友克)

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