甲子園での継投、広陵・中井監督の笑顔|中京大中京・高橋源一郎監督

甲子園での継投、広陵・中井監督の笑顔|中京大中京・高橋源一郎監督

全国でもトップの名門と言える中京大中京。春夏合わせて11度の甲子園優勝(春4回・夏7回)、甲子園通算136勝はいずれも全国トップの数字である。そんなチームを2010年秋から監督として指導する高橋源一郎監督に結果を残し続けている秘訣、名門ならではの苦労などを聞いた。高橋監督も中京大中京の出身。3年春には主将として選抜高校野球に出場し、チームは準優勝を果たしている。中京大、三重中京大、三重高校での指導を経て2009年4月からコーチとして母校に赴任。翌2010年の秋から監督を務めている。チームはちょうど2009年夏に甲子園優勝を果たしていたが、ここから苦しい時期が続くこととなる。「監督になって13年ですけど、当時は30歳で今思えば若かったですね。チームが2009年夏に日本一になっていて、甲子園にも続けて出ていた時期でした(2009年春から2010年夏まで4季連続出場)。そこから自分が監督になってしばらく甲子園に出ることもできなくて、結果として流れを止めてしまうことになったので、ちょっと辛いという思いはありました。簡単にできるとはもちろん思っていませんでしたけど、全く思うようにいかない。今振り返ってみれば選手との関わり方、野球の知識、経験、そういうすべてのことが上手くできていなかったと思います。今の自分だったらそうはしないなということもたくさんあります。まだ若くて体も動くので結果が出ないととにかくがむしゃらに練習量をこなすとか、選手の特性を考えずにこちらの考えを押し付けていた部分は少なからずありましたね」全国でもトップの名門校、しかも甲子園で優勝を果たしてから間もないチームを30歳の若さで引き継ぐというのは相当な苦労があったはずだ。チームは2010年夏を最後に甲子園出場からも遠ざかり、2015年夏にようやく監督として初の甲子園出場をつかむこととなる。その裏には高橋監督自身の変化もあったようだ。「勝てなかった時期はこのままじゃいけないというのは何度も思いました。そこから色々考えて、自分の押し付けではなく、選手一人一人に向き合わないといけないというように考えるようになりました。選手の話や意見を聞くこと、言いやすい空気を作ること、そういうことを心掛けるようになって、チームも変わっていったと思います。今でも覚えていますけど、初めて夏の甲子園に出た2015年の愛知大会の決勝では試合前にキャプテンの伊藤寛士(現JR東海)に『先生、今日いつもより硬いですよ』と言われました。それだけ自分も緊張していたんですけど、そういうことを選手が言える関係性ができたことが結果にも繋がったのかなと思います」監督として初の甲子園となった2015年夏は2勝をあげて3回戦に進出。キャプテンの伊藤とエースの上野翔太郎(元三菱重工East)は大会後のU18侍ジャパンにも選ばれるなど、名門復活を強く印象付けた。しかしその後も高橋監督の試練は続く。監督して2度目の甲子園となった2017年夏は初戦で広陵に逆転負けを喫し、6回途中までほぼ完璧な投球を見せていた先発投手を降板させた采配に対して批判が集中したのだ。この時のことについても話を聞いた。「あの年は継投で勝ってきたチームでしたから、愛知大会と同じ戦い方を甲子園でやった結果の逆転負けでした。先発の磯村(峻平・現トヨタ自動車)があのまま最後まで行けるとは今でも思いませんけど、タイミングなどについては甲子園での経験が足りなかったのだと思います。大観衆の前でいつも以上の投球ができていましたし、継投したことでスタンドからも『ここで交代させるの?』という雰囲気もありました。継投した時に中井監督がベンチで笑ったんですよね。相手にしてみればその継投が助かったということですし、笑顔が出るような采配をしてしまった。中井監督の笑顔を見た時に嫌な予感があったことも確かです。5回が終わった時に磯村に『限界か?』と聞いたら、本人は『もうぼちぼち(そろそろ)です』と答えたんですね。それもあって6回の途中で交代させたんですけど、今思えば違う聞き方もあったのかなと思っています。それくらいあの日は良いピッチングでしたし、大観衆の前で自分の限界を超えられるチャンスもあったかもしれません。選手の様子を見ながらどんな声掛けをすべきか、そういうことも考えさせられました甲子園と地方大会は別物だと思い知らされました」広陵はこの後も勝ち進んで準優勝を果たしている。それだけのチームを相手に中盤までは完全に圧倒していただけに、この逆転負けはかなりの悔しさがあったはずだ。この経験をバネに2019年には更に強いチームを作って全国の舞台へ挑むこととなるが、そこからの話は後編で紹介する。(取材・文・写真:西尾文典) 関連記事 【2020高校生ドラフト候補紹介】#3 高橋宏斗(中京大中京)2019.11.22 選手 【注目選手2018春】勝負強い必殺仕事人|澤井廉(中京大中京)2018.2.20 選手 【中京大中京】キャプテン・伊藤康祐「全国制覇と日本一は違うと思っています」2017.3.1 選手 【中京大中京】全国一の名門校の普通すぎる練習環境。必然的に磨かれた数と効率を意識した練習(後篇)2017.2.28 学校・チーム 【中京大中京】全国一の名門校の普通すぎる練習環境。必然的に磨かれた数と効率を意識した練習(前篇)2017.2.27 学校・チーム

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