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昨年4月に就任した杜若の田中祐貴監督。プロでの経験だけでなく自身の高校時代、そして引退後の取り組みなどを生かして指導していることをこれまで紹介してきた。後編では更に具体的な事例と、今後の目標などについて紹介する。メディカル面は特に専門の先生に相談 この春は30人の1年生が入部するなど、強豪復活に向けて期待は高まっている。前編でも少し触れたが、その中でも特に注意しているのが故障の予防だという。「自分もプロでは怪我に苦しみましたが、高校野球を始める前の時点で怪我をしている選手は本当に多いです。今、2年生と3年生の故障者は0ですけど、入部したばかりの1年生でいきなり怪我をしてしまった選手もいます。こちらももちろん最大限注意はしますけど、小学生や中学生の間に無理をし過ぎてしまって、その負担が高校で爆発してしまうことも多いです。時限爆弾みたいなものですよね。自分が来てから専門の機関に依頼して定期的にメディカルチェックをするようにしていますが、それでだいぶ見えてくることもあります。この4月に入ってきた1年生でも良いボールを投げていたので試合で起用したいなと思っていましたけど、メディカルチェックの結果を見て、今はやめた方がいいという結論になりました。自分の高校時代にはそういうものもなかったので、どうしてもやり過ぎてしまう部分もありましたけど、そうならないようにというのは気をつけています」選手からすると当然試合に出て結果を残したいという気持ちから無理をしてしまうということもある。また厄介なことに自覚症状がなく、いきなり大きな故障に繋がってしまうこともあるという。それを防ぐのは指導者として重要な役割と言えるだろう。またプレーヤーとしてだけでなく、引退後の経験を生かしていることはこれまでにも紹介してきたが、監督である自分が全てを対応できるとは考えていないという。「自分も怪我をして、引退後も勉強したので多少の知識はありますが、もちろん分からないこともたくさんあります。だからメディカル面は特に専門の先生に相談しながらやっていますね。最近は中学時代に手術している子も多くて、その内容もしっかり聞かないと治ったと思っていても十分ではなかったというケースもあります。あと野球に関してもそうですよね。ピッチングについては自分がプロのマウンドで経験してきたことや、そこから学んだことを伝えられるというのは強みだと思います。そういうのは感覚的な話なので、やっぱり経験者だからこそ伝えられるということはありますね。ただ野手のことについては当然分からないことも多いので、こちらも勉強しながら取り組んでいるという部分は多いです。あとトレーニングについても当然そうで、自分では分からないことも多い。専門のトレーナーに来てもらって、何が必要なのかをしっかり知ったうえで取り組むのが大事です。アップの話もしましたけど、高校野球の場合、数を数えたり声を出したりするのに必死になって、実際の効果は薄いことも多いと思います」色んな監督の良い部分は学んで取り入れていきたい この日もキャッチャーが専門の外部コーチが指導に訪れており、バッテリーの指導については相談しながら行っている様子が見られた。自身の経験だけではなく、そういったネットワークを駆使できることも田中監督ならではの強みと言えそうだ。まだ就任から1年だが、この春は地区予選を勝ち抜いて県大会出場を果たすなど徐々にチームも変化が見えてきている。また物足りないと感じていた選手についても、自身の現役時代とは違う良さもあるそうだ。「まず素直な子が多いのは良いことだと思いますね。こちらの話を適当に流すようなこともなく、しっかり受け止めようとしてくれます。今まで知らなかったことが多いというのもありますけど、そういう姿勢があるからチームも変わってきているのだと思います。春の地区大会も雨でラッキーな部分も多かったですけど、(同じ地区の強豪である)愛産大三河に勝てたのは大きかったですね。まだ足りないところだらけで、選手は本気で『甲子園を目指しています』と言えるところまでは来ていないですけど、自信になっていることは増えていると思います」最後に今後の目標、目指すチームについて聞いた。「自由に自主性、主体性を持ってというのはもちろん大事ですけど、(前編の)最初にも言ったようにチームとしての規律も大事です。まだ自分も試行錯誤している状況なので、色んな監督の良い部分は学んで取り入れていきたいとは思っていますね。でも監督の自分が何から何まで全てを教えるのではなく、最終的には選手が自分で成長して勝つ。僕はそのためのヒントを与えて手助けしてというのが理想だと思っています」 この日は大会直前ということで実戦的な練習が中心だったが、監督自らが指示を出しながらも、選手がサインを出しながら行うなど自主性を尊重するような取り組みも見られた。また実戦練習に加わっていない選手は打撃やトレーニングなど個別のレベルアップに取り組む姿も印象的だった。激戦の愛知の中で今後田中監督が指揮する杜若がどんなチームになっていくのか。ぜひ注目してもらいたい。(取材・文・写真:西尾典文) 田中祐貴 1979年生まれ。愛知県豊田市出身。杜若高校では2年からエースとして活躍し、2年夏には愛知大会ベスト4、3年夏には愛知大会でベスト8に進出。1997年のドラフト5位で近鉄に入団し、オリックス、ヤクルトでプレーし一軍で通算28勝をマークした。引退後は野球塾での指導などを経て帝京大可児(岐阜)でもコーチを経験。2022年4月から杜若高校の監督に就任した。 関連記事 大敗の春からの巻き返し、「一体感を持ってチームで戦う」|中京大中京・高橋源一郎監督2023.5.5 学校・チーム 甲子園での継投、広陵・中井監督の笑顔|中京大中京・高橋源一郎監督2023.4.28 学校・チーム 【誉】2年で「四強」のフィジカルを超えて、大阪桐蔭に追いつこう!2022.7.9 学校・チーム 【大府】学校を挙げての体育指導強化と「検定型授業」(後編)2022.3.31 学校・チーム 【大府】野球部強化にも繋がる、学校を挙げての体育指導強化(前編)2022.3.29 学校・チーム 【西尾東】一人も辞めなかった3年生、最後の大会も全員で!2020.6.30 学校・チーム 【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(後編)2019.10.29 学校・チーム 【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(前編)2019.10.28 学校・チーム 【東邦】AI搭載マシンを使用したバッティング練習2018.12.13 学校・チーム 【東邦】東海王者の練習は基本重視の「東邦スタイル」2018.12.12 学校・チーム 【愛工大名電】「強打」へ舵を切ったチームの地下足袋とトスバッティング2018.7.9 学校・チーム 【愛工大名電】強打も武器にした紫軍団、「バント練習はしていない」2018.7.6 学校・チーム 【愛知】フィジカルの重要性を食トレで改めて実感2018.4.17 カラダづくり 【至学館】グラウンドを持たない「東海王者」の練習内容と取り組み2017.7.3 学校・チーム 【至学館】恵まれない練習環境で躍進を続ける東海王者2017.6.30 学校・チーム
元記事リンク:自信になっていることは増えている|杜若・田中祐貴監督
