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現役時代、アメリカ3Aで活躍した根鈴氏が提唱する「縦振り」はMLBで主流のスタイル。打球に角度をつけて、ゴロではなく、ライナーやフライを打つための技術である。昔からある日本の教えとは違うが、大谷翔平選手のようなスラッガーを目指すなら、「縦振り」は必ず知っておいた方がいい注目のバッティング方法だ。「打撃練習=スキルの向上」パワーはトレーニングジムで養う みなさんは、バッティング練習にどんなイメージを持っているでしょうか?おそらく、日本の多くの選手・指導者が、「強く打つ」「遠くに飛ばす」に力を入れていると思います。日本人が大好きな、斜め前からのティー打撃(特に連ティー、ロングティー)は、代表的な例だと言えるでしょう。まずは、この前提となる考えを変えてみてください。アメリカの発想では、「打撃練習=スキルの向上」です。いかに、技術を伸ばしていくか。その技術とは、ストライクゾーンのさまざまな場所に、的確にバットの芯を出すこと。ストライクゾーンは立体的であり、「いくらの軍艦巻き」のように無数の粒が広がっています。前(投手側)でも後ろ(捕手側)でも、芯を出して、打球に角度をつける技術を磨かなければ、試合で打率を残すことはできません(POINT①)。 <POINT①|あらゆるコースに芯を出す> 投手側でも捕手側でも、ストライクゾーンの上にバットの芯を出すことが重要。ロングティーなどで投手側だけで打つ練習を繰り返すと、試合で結果を残すことができない。前で捉えるにしても、後ろからバットの芯を通し、その空間上にあるボールをすべて捉えるぐらいのイメージが必要になります。対して、日本の練習を見ていると、投手寄りのもっとも腕が伸びる“美味しいポイント”で打つ機会があまりに多すぎます。投手寄りで捉えるとなると、バッテリー間の18.44メートルを自ら縮めていることになり、こんなにもったいないことはないでしょう。では、振る力はどのようにつければいいか。アメリカ人の考えは、「パワーはトレーニングジムで鍛える」。バッティングは「無差別級」の闘いであり、体のデカイ選手が有利になるのは当然のこと。ウエイトトレーニングに対する意識は、日本人とは比べ物にならないぐらい高いものがあります。遠くに飛ばしたければ、技術を磨くとともに、体を鍛えることです。私は学生のうちは、「体重なりの飛距離で構わない」と思っています。体重がまだ60キロしかないのであれば、飛距離も60メートルでいい。その体で遠くに飛ばそうとするから、さまざまなエラー動作が生まれるのです。 ゴロが出にくいバット軌道を考える重要な技術のひとつ「パームアップ」 ここから、MLBで主流になっているバッティングの技術を紹介していきます。勘違いしてほしくないのは、「ホームランを打つための打撃論ではない」ということです。正しくは、「ゴロを打たずに、打球に角度をつける打撃論」。小柄な左打者が体に近いところでグシャッと詰まりながらも、ストレートをショートの上にライナーを打つのも、素晴らしい技術です。ゴロを打っているうちは、この打球は永遠に生まれません。ゴロを出さないために、アメリカで重要視されている技術に、「パームアップ」があります。スイングからフォロースルーにかけて、後ろ手(左打者の左手)の平が上を向いたまま、投球方向に伸びる技術です(POINT②)。 <POINT②|後ろ手の平を上に向ける> スイングからフォロースルーにかけて、後ろ手の平が上を向いたままスイングする(パームアップ)。それによって、投球に対してバットの芯を長く見せることができる。日本人の多くは後ろ手の返りが早く、親指が下を向きやすい。いわゆる、リストターン。これは自らバットの面を消す動きで、芯でボールを捉える確率を減らしています。連ティーばかりをやっていると、この動きがクセづいてしまうでしょう。両手でバットを持っていますが、重要なのはトップハンドです。日本人はミートポイントが投手寄りにある分、ボトムハンド(前の手)でバットを操作する傾向にあります。ですが、前の手に重きを置いている限り、捕手側でボールを捉えることはできません。意識は後ろの手。160キロのストレートであっても、バットの面を的確に向ければ、それが壁になって、ボールに角度がつきます。 ボールの数ミリ下を打つのは高難易度 重要なのは縦の要素を入れたスイング この考えの土台になるのが、インパクトに対する捉え方です。日本の昔からの教えは、ボールの数ミリ下にバットを入れて、バックスピンをかけて飛距離を出す。これはバットを横に振ることが前提で、丸いボールを丸いバットで打つことを考えたときに、相当難しい技術であるのがわかるでしょうか。バッティングはもっとシンプルです。構えたところからグリップを支点にバットを落とせば、滑り台のように加速していきます。ボールに対して、バットを縦に入れる。大谷翔平選手のホームラン映像を見ると、スイングに縦の要素が入っているのがわかるはずです。アメリカには、「バーティカル・スイング・アングル」という指標があります。真ん中の球を振る際、少年野球の子どもたちは地面に対して10度から20度で、MLBのトップ選手で30度前後、ヘッドが斜め上向きの角度でボールを捉えれば、おのずとライナーやフライが出るようになります。ミート部分が平面になっているクリケットバットを使ってみると、このイメージがわかりやすいはずです(POINT③)。 <POINT③|バットを縦に入れる!> バットを横に振る発想では、「ボールの数ミリ下を打つ」という日本的な考えになりやすい。縦に振る発想を持つことで、ボールに角度をつけやすくなる。注意点として、打球に角度をつけるときに、下から振り上げようとする選手がいますが、これは大きな勘違いであり、間違いです。たとえば、胸の高さのストレートを打つときに、グリップや後ろの肩がボールよりも下に落ちた時点で、バットを振り上げる軌道になり、速いストレートは間違いなく打てないでしょう。必ず、グリップと後ろ肩はボールよりも上です。高度な技術ですが、プロ野球選手の指導では、肩の付け根に近いところにスタンドティーを設置しています。もちろん、実際の試合でこんなに高いボールを打つ必要はありません。この高さを練習しておけば、ここから低いボールへの対応はさほど難しくなく、縦に落としていけば対応ができます(POINT④)。 <POINT④|後ろ肩、グリップはボールより上に> 投球のラインに対して、後ろ肩とグリップが下がった時点で、バットを振り上げる軌道になる。高難度の技術であるが、後ろ肩とグリップはボールより上に置いておく。高校生におすすめの「抱っこスイング」体幹と下半身を使って、ボールの数ミリ下を バットの芯を出す ここまでの理論を体得するために、さまざまなドリルがあります。高校生のみなさんにもっともシンプルでわかりやすいのは、胸の前でバットを抱えて、スタンドティーを打つ「抱っこスイング」です。 <おすすめドリル|抱っこスイング> 高校生におすすめなのが、胸の前で抱えたバットでスタンドティーを打つ「抱っこスイング」。あえて手が使えない状態にすることで、理想的な体の使い方を体得できる。手が使えない状態でいかに、ボールに圧をかけるか。体幹と下半身を回し、右半身と左半身が入れ替わることで、バットの芯が投球方向に向くことを実感できるはずです。バットの芯がどう動いているかにも注目してください。必ず、捕手方向からホームベース上を通って、投手方向に進んでいます。実際のバッティングで、この軌道を作れているでしょうか?このスイングができてこそ、捕手側の深いポイントでも、芯をボールに向けることができるわけです。おすすめの練習なので、ぜひチャレンジしてみてください。バッティングに対する考え方が変わるはずです。(取材・文=大利 実 写真=花田裕次郎) 根鈴雄次 1973年8月9日生まれ、東京都出身。日大藤沢高校入学後、体育会独特の雰囲気等に悩み中退。10代で渡米。帰国後、都立新宿山吹高校に通い、1996年に法政大学入学。卒業後、MLBを目指して渡米し、モントリオール・エクスポズの3Aに昇格。その後、カナダやオランダ、日本など、複数の国を渡り歩き、2012年に現役引退。現在は横浜市青葉区に「根鈴道場」を開設し、杉本裕太郎(オリックス)や清宮幸太郎(日本ハム)らの打撃指導に携わっている。 関連記事 糸井嘉男インタビュー|今だったら絶対アメリカの大学を目指す2025.3.27 PR 【書籍紹介】「MLBでホームラン王になるための打撃論」2025.2.17 PR
元記事リンク:高校生向け!根鈴雄次流MLBバッティング術