ひとつ勝つことで満足感が生まれた2018年夏の甲子園|甲子園優勝監督の失敗学(慶應義塾・森林貴彦監督)

ひとつ勝つことで満足感が生まれた2018年夏の甲子園|甲子園優勝監督の失敗学(慶應義塾・森林貴彦監督)

高校野球の頂点に辿り着いた名将たちにも、失敗や後悔、苦い敗戦があった——。昨年発売された『甲子園優勝監督の失敗学』(KADOKAWA)の中から、高校野球指導者の方に参考となる部分を抜粋して紹介します。今回は慶應義塾・森林貴彦監督の章の一部を紹介します。ひとつ勝つことで満足感が生まれた2018年夏の甲子園北神奈川代表として臨んだ2018年夏の甲子園。森林監督の中には、「お願いだから初日だけは引かないでくれよ」という気持ちがあったが、キャプテンの下山が引いたのは大会初日、8月5日の第3試合だった。神奈川大会の決勝が7月30日だったため、少しでも心身の疲れを取る時間がほしかったのだ。ただ、こればかりは、自分たちでは操作できないので仕方がない。初戦の相手は、投手力が武器の中越。2対1とリードした7回表に2対2に追いつかれるが、8回表二死一、二塁のピンチで、先発・生井のあとを継いだ渡部が空振り三振に仕留め、同点のまま最終回を迎えた。9回裏二死一、二塁から宮尾将がセンター前にタイムリーを放ち、劇的なサヨナラ勝利を収めた。慶應義塾の夏の甲子園でのサヨナラ勝ちは、1920年の準決勝以来じつに98年ぶりのこと。アルプスの応援団とともに、勝利の塾歌を歌うことができた。問題はここからだ。森林監督にとっても選手にとっても、甲子園でひとつ勝つのは初めての経験だった。次の2回戦は、1週間後の8月12日に組まれていた。「正直、気持ちの面でも体の面でも調整の難しさを感じました。1週間あったので、試合の翌日はオフにして、そこからちょっと軽めの練習を入れながら、2回戦に入っていこうと思ったんですけど、ギアの入れ方がわからなくなったんですよね。チームもそうですし、監督であるぼく自身も。とにかく暑かったので、疲労を溜ためないようにバッティング練習中心で臨んだところ、2回戦はよく打ったんですけど、走塁の判断ミスがあったり、守備のミスがあったりして、ぐちゃぐちゃになってしまいました」相手は高知商。1回裏に5安打を集中させるも、無死満塁からのレフト前ヒットで、二塁走者が本塁で刺されるなど、本塁憤死が2つ。立ち上がりに大量点を取れるチャンスがあったが、2点に終わった。直後の2回表、先発の生井が大量7点を失い、高知商に流れを持っていかれると、4回にも4点を取られて、最終スコアは6対12。スコアほどの力の差はなかっただけに、悔やまれる1敗となった。「『甲子園は甘くないな……』と思いましたね。しっかりと準備しないと、勝ち上がることはできない。フワッとした感じで試合に入ってしまった。チーム全体がひとつ勝つことで満足していたところはありました。もちろん、監督も含めて。そこはもう、大きな後悔ですね」〝失敗〞という言葉は、あえて使わないようにしているのか。取材中、こちらから話を振らない限り、口にすることはなかった。森林監督が口癖のように語る言葉のひとつが、「経験を糧にする」だ。経験するだけなら、誰でもできること。甲子園に行って悔しい気持ちを味わうのも、大きな経験であるが、それを糧にしなければ、その価値は薄れてしまう。「糧にする」を辞書で調べると、「経験や出来事などを今後の人生の成長のために用いること」とある。自分自身の成長につなげてこそ、その経験に意味が生まれる。「勝ったとしても負けたとしても、大事なのは経験をどうやって今後に生かすか。負けたからダメだったなんてことはありません。『負けてこそ学ぶことがある』と言われることもありますけど、勝っても学ぶことはあって、その1試合から得ることは必ずあります。その大小はあったとしても、ひとつひとつの経験を無駄にせず、次に生かすように心がけています」この負けを見事に次につなげたのが、2023年の戦いだったと言える。(続きは書籍でお楽しみください) Amazonはこちら 「甲子園優勝監督の失敗学」大利実KADOKAWA2024/7/31発売 関連記事 「おれだって本気だ。勝ちてぇよ!」練習で流した初めての涙|甲子園優勝監督の失敗学(創志学園・門馬敬治監督)2025.12.5 学校・チーム 練習メニューを示すことからスタート|甲子園優勝監督の失敗学(東洋大姫路・岡田龍生監督)2025.11.22 学校・チーム 激しいチーム内競争のメリットとデメリット|甲子園優勝監督の失敗学(仙台育英・須江航監督)2025.10.16 学校・チーム 「自立とは自ら考え想像し、決断して実行すること」|甲子園優勝監督の失敗学(花咲徳栄・岩井隆監督)2025.9.24 学校・チーム 甲子園優勝監督の失敗学|日大三前監督・小倉全由2025.9.12 学校・チーム

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