【郁文館】目指すは2029年の甲子園出場!名将・佐々木力監督の挑戦

【郁文館】目指すは2029年の甲子園出場!名将・佐々木力監督の挑戦

1889年に創設された都内でも屈指の伝統校である郁文館(東京都文京区)。2003年3月にワタミグループの創業者である渡邉美樹社長(現・会長)が理事長に就任したことでも話題となった(2004年12月からは校長も兼任)。野球部はこれまで目立った実績はなかった。だが2024年1月に常総学院で春夏合わせて6度甲子園出場の実績を誇る佐々木力監督が就任し、にわかに注目を集めている。そんな郁文館の現状と目指すチーム像などについて、佐々木監督に話を聞いた。監督自身がグラウンド整備と補食作り選手としては取手二で1984年夏に甲子園優勝を経験し、監督としても常総学院を春夏合わせて6度の甲子園出場に導いた佐々木力監督。そんな実績のある指導者が、なぜ野球で目立った実績のない郁文館で指揮を執ることになったのだろうか。「きっかけは同級生が郁文館で入試広報部長にいたことです。前の監督さんの任期が終わって『次の監督を探しているから、まずは校長の話を聞いてほしい』ということで赴きました。聞くと『2029年に学校創立140周年を迎えるので、その年に何としても甲子園に行きたいから力を貸してほしい』という話でした。定年まで教員として常総学院にいるつもりでしたが、もう一度指導者を思い切ってやってみようと思ってお受けしました」2023年夏の大会後に話があり、さすがにすぐには無理だったが、1月には担当していた3年生の授業がなくなることもあって、常総学院側からもそのタイミングでの退職が認められたという。そんな急な監督就任ながら、すぐにチーム作りに動いた。「急だったので選手やグラウンドのことは分かりませんでしたが、できることはやろうと思って動きました。常総学院で部長を務められていた大峰真澄先生がちょうど前年に定年退職されていたのでお願いして、自分が来る前の9月から先に郁文館に来てもらっていました。当時の中学3年生で力のある選手は既に進路が決まっているのが大半でしたが、何とか大峰先生にも動いてもらって8人入ってくれました。それが今の3年生になります」実績のある佐々木監督が就任したことは当然話題となり、その後に入学してきた2年生、1年生は中学時代に実績のある選手もいるという。ただ、就任当時の野球部のレベルはそこまで高くなかった。「常総学院に入ってくる選手は当然甲子園を目指して覚悟を持って入ってくるので、そういう選手と比べたら当然力量が落ちるのは当たり前です。そういう選手たちに常総学院の時と同じような練習をさせてもついてくることはできません。最初は簡単なゴロも捕れない、ボールもしっかり投げられない子も多かったですからね」佐々木監督はグラウンド整備も選手に任せるのではなく、自ら動いて手本を示した。補食についてもそれまではコンビニで買ったパンやおにぎりだったのを見かねて監督自身が作るようになり、取材当日も監督特製の炊き込みご飯が選手に振るまわれていた。常総学院時代とは環境面も選手のレベルも大きな差があるが、その一方で変わらず重視している面もあるという。「高校野球で勝ち上がるにはやっぱり守備が大事だというのは変わりません。まずはキャッチボールがしっかりできること。バッティングは後からある程度何とかなりますが、ボールがしっかり投げられないのは苦労します。その点については何度も繰り返し言っていますね。肘から先の使い方が柔らかい選手は送球も良いことが多いですし、バッティングも変化球に対応しやすい。選手を見る時にはそういう点は変わらず重視しています」野球を続ける選手が増えるチームにしていきたい常総学院時代には鈴木昭汰(現・ロッテ)など多くの選手をプロや社会人野球に輩出してきたが、伸びる選手の特徴、選手の伸ばし方などについても聞いた。「選手には高校野球の後にどうなりたいかということを聞きます。そうするとプロでやりたい、東京六大学でやりたい、みたいなことを大体言います。じゃあその目標があるなら、こういう選手にならないといけない、こういうアピールができないといけないということはよく話します。例えばバッティングでもよく高校通算何十本ホームラン打ったというのはあまり重要じゃない。公式戦の大事な時に打てるか、変化球にもしっかり対応できるか、そういうところですよね。あと、上手くいっている時はこっちの話なんか聞きません。自分も木内幸男監督(前常総学院監督)に対してもそうでした(笑)。逆に上手くいかなかった時にどう声をかけるかが重要です。自分からもそうですし、選手同士でもそのことは言っています」指導者としても十分な実績のある佐々木監督だが、一方で初めて就任した東京の学校ということで難しさを感じている面もあるという。「まず東京は学校の数が多いですよね。夏はシードをとれないと7試合か8試合勝たないといけない。当然ピッチャーも複数必要になってきます。茨城は甲子園に出るようなチームは限られていて、それ以外のチームとは力の差が大きかったですが、東京はそれなりに力のあるチームが多い。そういう面でも茨城にはなかった難しさは感じています。関東一、帝京、二松学舎大付などとやる前にいかに消耗しないかは重要になりますね」昨年夏は3回戦で東亜学園に敗れ、今年の春も二松学舎大付に2回戦でコールド負けを喫するなどまだ上位進出を果たすことはできていないが、春はプロも注目するエースの齋藤拓未投手を手術明けで欠きながら初戦では甲子園出場10回を誇る堀越に競り勝つなど力をつけてきていることは間違いない。佐々木監督も徐々に手応えを感じてきているようだ。「選手も親御さんもせっかく佐々木のもとで野球をやるなら、高校で終わりではなく、その先でも野球をやろうと言ってくれるケースが増えてきました。自分もその期待には応えたいと思いますし、練習試合でも強いチームに勝ったり、良い試合ができるようになってきました。甲子園出場はもちろんですが、次のステージでも野球を続ける選手が増えるチームにしていきたいと思います」学校が目指す2029年の甲子園出場に向けてどんなチームになっていくのか。郁文館の今後に注目だ。(取材・文:西尾典文/写真:編集部)

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