【中央学院】相馬幸樹監督|意識しすぎた強みとストロングポイント

【中央学院】相馬幸樹監督|意識しすぎた強みとストロングポイント

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか?2018年に春夏連続で甲子園初出場を果たし、今年春の選抜でも6年ぶりの出場を決めた中央学院の相馬幸樹監督に話を聞きました。(聞き手:西尾典文)社会人野球で全く通用しなかった自分の力現役時代は市立船橋で2年連続夏の甲子園に出場し、大阪体育大、シダックスでプレーした後はアメリカでトライアウトを受けた経験もある相馬監督。現役引退後は母校の大阪体育大の大学院でスポーツ心理学を学び、中央学院の監督に就任したのは2007年で、当時まだ28歳という若さだった。当時を振り返って相馬監督はこう話す。「野球部で不祥事があって、そこからチームを立て直すことを求められて呼んでいただいたんですけど、最初の頃は本当に大変でした。学校や周囲からも野球部に対する嫌悪感みたいなものがありましたし、今みたいにスタッフも多くなくて、何でも自分でやらなければならないということもありました。正直最初の5年間くらいはあまり記憶にないくらいです。ただ振り返ってみると、現役をあがったばかりでまだ体も動いたので、何でもやり過ぎていたとは思いますね。試合に負けたら帰って猛練習するとか。自分も監督として無理してキャラクターを作っていた部分もありました。当時の選手に今聞くと『なんであんなに怖かったんですか?』と言われますね(笑)」ただ選手に対して厳しい練習を課していたのも闇雲に結果を求めていたからというわけではない。相馬監督自身の後悔がそうさせた部分もあったのだという。「高校、大学の時は正直そこまで深く考えなくても力がついて、結果もついてきました。どちらかというといかにサボろうかと考えていた方でしたね。ただ社会人になって全く通用しなくて、その時に自分の持っている力を出そうということばかり考えて、その力自体を上げようという発想ができなかったんですね。もう少しそういう気持ちで早くから取り組んでいて、レベルアップしようとしていたらもっとできたのかなという思いはあります。だから選手たちにはそういう思いをしてほしくないというのはありますし、それは今でも話しています。ただ昔はそれを何でも押し付けてやりすぎていたのかなというのはありますね。スポーツ心理学も学んで、いかに選手自身のやる気を邪魔しないことが大事とは感じていたのですが、今思えば最初はそれができていなかったですね」シダックスでのプレーは2年間だったが、当時チームを指揮していたのは野村克也監督で、その影響も強く受けたという相馬監督。今でもあらゆる資料を使ってミーティングなども行っているというが、チーム作りという点でも以前は失敗だと感じていることがあるという。「今思い返してみると、チームの強みとストロングポイントを意識し過ぎていたと思いますね。例えば力のある投手がいる時は守り勝とうとか、打てる選手がいる時は打ち勝とうとか、そういうのを出そうとして結局上手くいかなかったことがありました。色々やってみても、やっぱり全体のバランスが大事だと思いますね。野球って色んなプレーがあるので、どこかだけが尖っているよりも、それぞれをしっかりできた方が勝つ確率も高くなるんだなと。上手くできているなと思いました。だから今は強みは出しながらも、バランス良くレベルアップしていくというのは考えています」今年のチームも力のある投手を複数揃えているものの、決して守り勝つというスタイルだけでなく、打撃や走塁などにも力を入れており得点力も高い。また取材当日は選抜に向けて仕上げていく時期だったということもあるが、守備に就いても走者をつけて実戦的なプレーの練習に取り組んでいた。“品格”を求めすぎて消してしまった選手の良さ冒頭でも触れたように2018年には春夏連続で甲子園に出場。県内でもすっかり強豪校の一つに数えられるようになったが、その後はなかなか勝ち切れないことも多かった。その裏にも失敗と後悔があったという。「甲子園に出たチームは本当に勢いでそのまま行っちゃったみたいな感じでした。行ける時はこんなものなのかと思いました。ただ続けて甲子園に出たことで、その後にチームにも必要以上に“品格”みたいなものを意識させすぎたかなというのはあります。そうすることで選手の持っていた良さを消してしまっていた部分もあったのかなと。今思い返してみると、もっとガツガツしたところを出してやった方が良かったのかもしれません」また前回の甲子園出場から今回の間に起こった大きな出来事としては2020年のコロナ禍があげられる。そこで相馬監督が新たに気付いた点もあったそうだ。「個人的にはこんなにやることがない期間は初めてだったので、のんびりできて楽しかったというのはありました(笑)。ただ夏の甲子園が中止となった時は、自分も経験したことがないことなので何て言えばいいかは難しかったですね。自分があの時の3年生の立場だったら、甲子園がなくなった時点で高校野球は辞めていたかもしれません。3年生にはもう中止になったタイミングで辞めてもいいという話もしましたが、誰も辞めませんでした。代替大会もどうなるか分からない中でもいつもと変わらず取り組んでいたので、立派だなと思いました。本当に野球が好きな選手が多いんだなと。そんなこともあって、いかに選手のそういう気持ちを引き出せるかが重要だなと思うようになりましたね」この年夏の千葉県の代替大会は地区ごとに行われたが、中央学院は決勝で八千代松陰に敗れたものの10対11という大熱戦を演じている。それも選手の力を上手く引き出した結果と言えそうだ。後編では初の甲子園での失敗、6年ぶりに挑む選抜への意気込みなどをお届けする。(取材・写真/西尾典文) 関連記事 【注目選手2018春】投手を支える防波堤|池田翔(中央学院)2018.2.14 選手 【注目選手2018春】投打に高レベルな二刀流|大谷拓海(中央学院)2018.2.9 選手 【中央学院】キャプテン・武田登生「秋に負けた東海大市原望洋にはやっぱり勝ちたい」2017.2.15 選手 【中央学院】指導者も選手と一緒になってレベルアップを目指す!2017.2.14 学校・チーム 【中央学院】分厚いマニュアルと4人のコーチ。野球の技術向上に集中できる野球環境2017.2.13 学校・チーム

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