昨年8月に長年指揮を執った前田三夫監督が退任した帝京高校。新たに監督に就任した金田優弥監督は今年で37歳という若い指揮官だが、同校OBであり、2011年から10年間コーチとして指導にもあたってきた経験を持つ。春の都大会では創価、早稲田実、国学院久我山と強豪に大勝しており、11年ぶりとなる夏の甲子園出場にかかる期待も大きい。そんな“東の横綱”が復活に向けて取り組んでいることを金田監督に聞いた。夏までに不安な部分を少しでもなくす前編では帝京の伝統である打撃の再強化、ストレッチや走り方などの見直しによってチーム力の向上に手応えを感じているという話だったが、まだまだ夏に向けて勝ち抜くには足りない部分はあるという。「春は基本的に送りバントを使わず、積極的に打たせてホームランもよく出ました。秋から冬に取り組んできたことの成果はある程度出たと思います。ただ、良い投手を相手にした時には長打やホームランを続けることは難しいです。高いレベルのボールへの対応力はまだ上げる必要がありますし、個人だけでなく『打線」という意識はもっと必要になってきます。夏は1点をとるために当然送りバントもしないといけない。5月の後半から6月にかけてはかなり力のあるチームと多く練習試合を組んでいますが、そこでしっかりした形を作らないと夏には勝てないと思います」冒頭でも触れたとおり、春の都大会では強豪を相手に次々と大勝をおさめたものの、準決勝では同じ東東京のライバルである関東一に敗れている。エースの高橋蒼(2年)が登板しなかったということはあるが、それでもライバルの強さを感じる部分は多いという。「関東一さんは毎年そうですけど、足を使った攻撃が上手いですよね。ここぞ、というところでたたみかけてくる。春はうちがそれに耐えきれませんでした。序盤は何とかしのいでいましたけど、5回に一気に5点とられて、それが最後まで響きました。この試合に限らず、関東一さんは夏もまず取りこぼさないですよね。しっかりと勝ち上がってくる。東東京の中では一番安定しているチームだと思いますし、うちにはない部分だと思います。まずはしっかり地力をつけることはもちろんですけど、それを出し切れずに負けてしまうこともよくありました。そうならないためにも、夏までには不安な部分を少しでもなくして臨まないといけないと思っています」この3年生たちと一緒に甲子園に行きたい春の関東一戦は金田監督の話す通り、序盤からリードを許すと、5回に一挙5点を奪われてその後追い上げたものの5対8で敗れている。こういった展開をひっくり返す力をつけるということも目指しているという。「春もそうでしたけど、先行した試合はある程度勝てています。ただ追う展開になった時になかなかひっくり返した経験がありません。だから今日の実戦練習でも4点差で負けている場面を想定してやっています。夏は当然想定外のことが起きて、序盤にリードを許すことも考えられますから。これも不安をなくす一つですね。あとはエラーがでたり、四死球を出すことも当然あるので、そんな中でも得点までは許さない、逆に言えば自分たちの攻撃でそういうチャンスをもらったらしっかり得点を取りきる、ということも大事だと思います」ここ数年はコロナ禍で色々と制限も多く、思うように活動できなかった時期もあったという。しかしだからこそ、結果を残したいという気持ちはより強くなったそうだ。「今年の3年生は入学して早々コロナでなかなか練習ができなくて大変な部分もありました。2年生になって、ようやくいつもの1年生が教わってきたことができるようになって、そうしたら前田監督が退任されて、思い描いていた高校野球ではなかったと思います。ただそれでも必死に取り組んでやってきて、ようやく力もついてきた。だからこそ、この3年生と一緒に夏は勝ち切って甲子園にいきたいですね」5年前にも帝京高校を取材したが、その時は前田監督の存在感が強く、こちらも圧倒されたのを覚えている。金田監督からも絶えず指示の声は飛んでいたが、チームの雰囲気や空気は確かに5年前とは変化が感じられた。新たな帝京がこの夏、どんな戦いぶりを見せるのか。ぜひ注目してもらいたい。(取材・文:西尾典文/写真:編集部) 関連記事 【帝京】突然の監督就任、見直した全トレーニング2022.6.7 学校・チーム 【帝京】名将・前田三夫監督が語るキャッチャー育成論2017.5.29 学校・チーム 【帝京】「今思えば内野をやっていて良かった」田中麟太郎捕手2017.5.30 選手 【帝京】浅野主将「3年生は一人も辞めずに続けてきた」2017.5.31 選手 【帝京】「強打の帝京」を垣間見たパワフルな打撃練習2017.6.1 学校・チーム 君に2019夏エール!帝京高校 チアリーディング部2019.7.17 企画
元記事リンク:【帝京】夏までに不安な部分を少しでもなくす