【聖光学院】斎藤智也監督|チームや選手にはいいタイミングで挫折を経験することも大事

【聖光学院】斎藤智也監督|チームや選手にはいいタイミングで挫折を経験することも大事

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか? 「不動心」を掲げ、この夏にも2年連続18度目の甲子園出場を果たした、東北の強豪・聖光学院(福島)の斎藤智也監督にお話を聞きいた後編です。(聞き手:田澤健一郎)力をつけても、その力を野球で引き出せるかは別前編はこちら→ ――聖光学院を「甲子園で勝てるチーム」に変えた「体」、すなわちフィジカルと体力を甲子園レベルまで高める取り組み。これは伸び悩んでいるチームの起爆剤にもなりますか?斎藤 もう一段、壁を破って上に行くカギになり得るものだとは思います。ただ・・・・・・。――ただ?斎藤 丸いボールと丸いバットで戦う野球。試合の半分は運に委ねなければならないと思うんですよね。守りと走塁は鍛えれば鍛えだけ裏切らないとは思いますが、それでも。ハイレベルな試合になればなるほど、球際の、ほんの少しの捕った、捕らないが勝敗を分けたり。だから、選手たちにはグラウンドに立った姿勢が強く、たくましく、頼もしく、チーム愛のある選手になれと言っています。仲間を大事にしないチームに運は来ませんから。――「強く、たくましく、頼もしく」とは自信に満ちた選手のようですね。斎藤 その意味でも「体」のレベルアップは選手の自信につながるんですよ。ウチは50m走、塁間タイム、ベンチプレス、握力、腹筋、背筋、懸垂、そり飛び、バイクをこいでの最大パワーなど、たくさんの項目を定期的に測定しています。自分が成長していることを実感しやすいし、フットワークがよくなったり、速く強いボールが投げられるようになったり、スイングや打球の速度も上がっていく。そうなれば速球にもついていけるようになるし、足が速くなれば内野安打も増え、盗塁も成功しやすくなる。――結果が出るようになって、さらに自信がつく。聖光学院といえば「不動心」に象徴される精神野球というイメージが強いですが、細かな数値への意識も強いんですね。斎藤 本当に「体」の強化は一石何鳥にもなる。「体」の力がないと技術があっても相手のスピードについていけない、といったケースもありますから。――近年はフィジカル強化で選手のプレースタイルがガラッと変わるケースがプロでもアマでも見られますね。斎藤 ただ、釘を刺すような悪いですが、体力をつけて技術が上がっても、心がついていけてないと、以前と同じまま終わることもある。力をつけても、その力を野球で引き出せるかは別。だから先ほどの話のようにチームに運が来るような姿勢を意識してほしい。――「強く、たくましく、頼もしい」選手になるには「体」の強化も重要、と。本当に初めての甲子園での大敗は今の聖光学院のスタートだったんですね。斎藤 失敗は、それが全てとは言いませんが、ありがたいものではあります。うまくいかないことや、試練、敗北がないと人間は強くならないし、気づきも生まれない。チームや選手にはいいタイミングで挫折を経験することも大事だと思います。運と感性はイコールのようなもの――では、現在の聖光学院、斎藤監督の「試練」とは?斎藤 甲子園で2つ、3つは勝てるようになってきたけど、まだ優勝候補に挙げられるような存在になっていないことですかね。そこには自分の至らなさ、不足感を抱いています。――それを打ち破るカギは?斎藤 今は選手の「心技体」のピラミッドを大きくしたいんですよ。――ピラミッド?斎藤 海から見える氷山の一角がありますよね。それがちょうど「体」と「技」。隠れて見えないけど、海に中には「体」と「技」を支える大きな「心」がある。ちょうど「心技体」のピラミッドのようですよね。今はより大きな「心」を身につけるため、その下に「運」と「感性」があると考えています。つまり5段のピラミッド。ただ、運と感性はイコールのようなものだから4段でもいいかな。――「運」と「感性」がより大きな「心」につながり、引いては「体」と「技」の大きさにもつながっていく。斎藤 志村史夫さんという物理学者と親しくさせてもらっているのですが、志村さんは「一流の人に共通しているのは運と感性を身につけていること」とおっしゃるんです。一流と二流は「心技体」はそれほど変わらないが、「運」と「感性」が違う、と。――先ほど「運」は引き寄せるものという話もありましたが、「感性」も後天的に豊かにできる?斎藤 ええ。何事も「本物」を見たり、一流の人の話を聞くなど「触れて、体験すること」が感性を磨く、感性が宿ることにつながる。――では、斎藤監督が今、「触れて、体験したいこと」は何ですか?斎藤 自然に身を置くのが好きなんですよ。先日、北海道に行った際には釧路湿原やタンチョウ、摩周湖などを見て回りました。今度は知床半島に行ってシマフクロウを見てみたい。地理も好きなので、いずれは日本一周をしたいです。鳥取砂丘、天橋立、佐田岬や能登半島の先・・・・・・行きたい所はたくさんあります。――選手たちにもそういう機会を設けているのですか?斎藤 ありますね。先日の東北大会は会場が秋田県だったので、秋田を代表する河川である雄物川の河口に連れて行きました。何を言うわけでもなく、30分くらい水とふれあう。そこで何を感じるかはその人次第。選手には何かを感じ、それを追求・探求して感動する経験をしてほしい。そういった感性は人間を豊かにするし、「人間力」にもつながると思います。(取材・田澤健一郎/写真・編集部) 関連記事 【聖光学院】斎藤智也監督|屈辱的な大敗から学んだ「パワーアップ」の必要性2023.12.15 学校・チーム 【Timely!的2023甲子園注目選手】#3 高中一樹|聖光学院(福島)2023.8.6 選手 【聖光学院】野球を愛しているから目指す「心のなかの甲子園」2020.5.26 学校・チーム いま東北野球がアツい!!東北6県の監督が語る「わが県」の魅力2019.2.19 企画 【いわき光洋】自主・自学・自立の精神、食トレで選手を伸ばす2018.5.2 カラダづくり 【白河】一度は断念した食トレ、意識改革で再スタート2018.4.27 カラダづくり 【全国スイングスピード選手権】白河高校|急成長中の進学校がチャレンジ!2018.3.16 企画

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