創部120年以上の歴史と伝統を有し、春夏合わせて43度の甲子園出場を誇る静岡高校。長く低迷する時期がなく、常に県内では上位の力を維持し続けており、今年も春の東海大会出場を果たしている。そんなチームを指導する池田新之介監督にこれまでの指導者経験での後悔や反省から現在の指導に生かしている点などを聞いた。焼津水産で巻き起こした旋風池田監督は静岡高校のOBで現役時代は主将も務めている。卒業後は指導者を目指して中京大学に進学し、指導者生活のスタートも母校の静岡高校だったという。「大学4年の時は採用試験に合格できずに1年間は草薙運動公園で勤務しながら、高校の野球部の手伝いもしていました。2度目の採用試験に合格して、最初は静岡高校の定時制に赴任となって正式にコーチとなりました。母校ですし、正式に赴任する前からお手伝いさせていただいていたので、スタートとしては凄くやりやすかったですね。最初の赴任は5年間でしたが、その間に甲子園にも出場できました。自分の高校時代も含めて3人の静岡高校の監督のもとで勉強させてもらいましたが、選手の能力も求めているものも高いですし、最初からそういうところで指導者として携われたのは大きかったですね」最初の赴任が母校で、コーチという立場ながら甲子園にも出場したとなれば指導者としてこれ以上ないほど順調なスタートだったと言えるだろう。しかしその後はしばらく全く違う環境に身を置くことになる。「5年間母校で指導した後、焼津水産に異動になりました。他の高校での経験が全くなかったのですが、やっぱりいろんな面で大きく違いましたね。環境も選手の意識も当然違います。練習で履いているシューズでも左右違うのを履いている子がいて、片方は穴が開いたけどもったいないから組み合わせて使っていると。確かに道具を大事にしていると言えばそうですが、今までそんな選手は見たことなかったですからね(笑)。ただ野球の能力はある子たちが多かったんですね。異動直前の3月の終わりに春の地区大会を見る機会があって、これは楽しみな子たちだなというのが第一印象でした」伝統もあって甲子園常連校の静岡高校とは違い、焼津水産は過去に一度も甲子園出場経験はなく、地区大会で敗退することが多いチームである。当然かなりのギャップはあったようだが、それでも最初からチームは上手く回り始めた。「グラウンドでの立ち居振る舞い、身だしなみ、整理整頓、そういうところからスタートしました。野球は隙を見せた方が負けるんだから、普段の生活から隙をなくしていこうよという話をしたのを覚えています。そうしたら春の大会で常葉橘に勝つわ、東海大翔洋にも勝つわで、あれよあれよと地区大会を勝ち抜いたんです。当時の春の県大会は12校しか出られなかったんですけど、出場したのは30数年ぶりだったそうです。それで県大会でも一つ勝ってベスト8まで残って、夏のシード校にもなりました。当時は若かったので勢いだけはあって、どんどんなれなれしい感じで入っていったのが良かったのかもしれませんね。当時の校長先生も元々野球部の監督をされていた方で『好きなようにやってくれれば良いから』ということで、やりやすい環境を作ってくださったのもありがたかったです。もちろん技術練習などは、静岡高校で5年間コーチをやらせてもらった経験が生きたというのもありましたね」選手に教わった、歩幅を合わせる事の大切さ焼津水産では7年間監督を務め、春、秋の県大会にも出場。夏もベスト16まで進出するなど結果を残した池田監督。しかしその後異動した島田商では大きな挫折も味わうことになる。「島田商に異動して最初は部長だったんですけど、監督が体調を崩されたこともあって、1年目の秋の大会が終わった後から監督になりました。島田商は当時なかなか勝てない時期で夏も4年続けて初戦敗退だったんですけど、監督になって最初の夏はベスト8まで勝ち進めました」ただ大変だったのはその後だった。2年生が秋の新チームになった時に練習をボイコットした。「『監督が一生懸命やられていて、志も高いのは分かりますが、僕たちはそこまでのレベルを目指していません』という理由でした。最終的には全員戻ってくるんですけど、『ああ、そういう風に思っていたのか』と気づかされましたね。島田商の選手たちは焼津水産と比べても力のある子は多いし、プライドも持っている。それでいきなり来た監督からいろいろ言われても、ついていけないということだったと思います。自分が何とかしないといけないと思って突っ走って、ふと振り返ったら誰もついてきていなかったのです。それから選手に歩幅を合わせることが大事なんだなと思うようになりました」後編ではそんな挫折からどう立て直して結果に繋げたのか。また監督として再び静岡高校に赴任してからの後悔や取り組みなどを紹介する。(取材・文:西尾典文/写真:編集部) 関連記事 【知徳】中学時代は4番手、小船翼がドラフト候補に成長するまで2024.4.25 選手 【WHO'S NEXT】勝又 湧斗(静岡)「鋭いスイングが自慢の駿河のバット職人」2021.7.21 選手 【2020高校生ドラフト候補紹介】#12 相羽寛太(静岡)2020.1.31 選手 【静岡】基本は健康な身体づくり!寮生も自宅生も同じ意識で2019.12.23 カラダづくり 【2019高校生ドラフト候補紹介】#20 紅林弘太郎(駿河総合)2019.5.10 選手 【掛川西】「全員本気・全員野球」勇気を持って戦う姿勢が大切 2018.9.10 学校・チーム 【静岡高校】食トレがキーになる公立強豪校のチームづくり2018.4.3 カラダづくり センバツ出場校の食トレ!静岡高校の食事をチェック!2018.3.23 カラダづくり 【注目選手2018春】名門校の牛若丸|村松開人(静岡)2018.2.16 選手 【静岡高校】4つのゲージで実践を想定した打撃練習2017.5.26 学校・チーム 【静岡高校】練習もトレーニングも正しい方法でやり続ける2017.5.25 学校・チーム
元記事リンク:【静岡】池田新之介監督|選手に教わった、歩幅を合わせる事の大切さ