高校野球界の監督がここまで明かす!守備技術の極意|岩井隆監督(花咲徳栄)

高校野球界の監督がここまで明かす!守備技術の極意|岩井隆監督(花咲徳栄)

全ポジションの指導を網羅!新基準バット対応マル秘上達メソッド!2018 年から続く「技術の極意シリーズ」の第5弾のテーマは「守備技術」。今年3月に発売された『高校野球界の監督がここまで明かす! 守備技術の極意』(大利実/カンゼン)から、今回は2017年夏の甲子園優勝校、花咲徳栄の岩井隆監督の章から一部を紹介します。球際へのこだわりが生んだスーパープレー 手の動きを制限して、足さばきを覚える——ここからは、技術的な指導について聞かせてください。花咲徳栄の守備を見ていると、派手なプレーよりも、堅実なプレーを重視しているように感じます。岩井 高校野球は一発勝負のトーナメント。基本的なことを大事に指導しています。特に新基準バットになったことで、守備の重要性が今まで以上に増すのは間違いありません。木製バットを使うU-18で、馬淵(史郎/明徳義塾監督)さんのもとコーチとして関わらせてもらったことも、大きな勉強になりました。——馬淵監督も「堅実さ」を好むイメージがあります。岩井 印象に残っているのが、今は立教大でプレーする広陵高校の小林(隼翔)君のショートを高く評価していたことです。正直なところ、最初は「どこがうまいんだろう」と思っていたんですが、ノッカーとして小林君の動きを見ていて、馬淵さんの言っていることがわかってきました。派手さはまったくない代わりに、アウトを確実に取る。ひとつひとつの動きに無駄がない。そのプレーを見て、より堅実に守ることの重要性を感じました。バットが切り替わるときに、うちの選手たちには「これからはとにかく守備。そうは打てない。内野安打になりそうな打球や球際の打球をアウトにできるか。だから、トレーニングでは1秒のタイム、守備練習では1センチの球際にこだわるぞ」と言いました。——昨夏の埼玉大会準々決勝(対西武台)では、同点で迎えた9回裏ツーアウト満塁、ファーストの横山翔也選手が一塁線の強い打球をダイビングで好捕する守備がありました。まさに、1センチの攻防。個人的には、埼玉の高校野球史に残るスーパープレーだと思います。岩井 一塁線、三塁線のノックはかなりやりましたから。偶然ではなく、必然のプレー。打球に対して低く飛べたからこそ、捕ることができたはずです。——ゴロ捕球の形はどこまで指導していますか。岩井 構え、入り方、捕り方など、基本的なことは教えています。構えは、太ももが地面と平行になるまで、お尻を落とす。狙いとしては、ボールを下から見て、下からすくう意識を持つため。打球を見るときも、意識としてはボールの下を見ておく。上から捕りにいった時点で、低く速いゴロには対応できなくなる。足幅のバランスは個人差があるので、四股を踏むことで確認しています(写真P122)。——ゴロはどこで捕るのがベストだと思いますか。岩井 体の真ん中です。左足で捕ろうとすると、左足に体重がかかって、頭が流れて、少し跳ねた打球への対応がしづらい。真ん中で捕ろうとすることで、右足から左足へのヒザの送りを使いながら、捕球から送球まで持っていくことができる。「体の幅が使える」という感覚です。ただ、最近は「右足の前で捕る」という考えも聞くようになって、実際に選手に教えたこともあります。個人的には、ファーストに投げることを考えると、右で捕るときには目からボールが切れやすい。なので、どうなのかなと……。ある人に聞いたら、「右で捕る意識を持っておけば、結果的に真ん中で捕れる」と教わって、「なるほど、そういうことね」と理解しました。——打球に入るまでの足の合わせで、大事にしていることはありますか。岩井 花咲のOBから、「ボールを捕るときに、手が邪魔していることもある」と聞いて、それは新しい気付きでした。教わったのが、腰の後ろで手を組んで、足だけでボールに合わせる練習です。サードベースの少し前に守って、ホームベースから転がされたボールを、股の間に通す。これで、ボールとの距離が近い選手は、実際の打球を捕るときも近い傾向にあります。——グラブをはめていると、最後はグラブでごまかすというか、調整できますよね。岩井 手を使えない状態にすることで、足の使い方に意識を置くことができます。——捕球に関しては、いかがでしょうか。岩井 よく言うのは、「右手で捕れ」(右利き)ですね。——グラブをはめていない手ですか?岩井 野球をまったくやったことがない人(右利き)に、リンゴをポーンと投げたら、右手で捕ると思います。左手が出てくるのは、訓練された野球経験者ぐらいでしょう。利き手が出るのが人間の本能。そう考えたときに、打球も右手で捕るのが自然な動き。ただ、野球の場合は左手にグラブをはめて、右手には何もはめていないので、現実的には無理な話です。それでも、右手で捕る意識は絶対に必要で、グラブに添えるようにと指導しています。守備がうまい選手の映像を見ると、右手の小指・薬指がグラブに入りそうになっていることもある。ただ、あまり言いすぎると、右手を入れすぎてボールで指を突いてしまう選手もいるので、そこは気をつけて伝えるようにしています。——なるほど、納得です。岩井 あとは脇を締めて、向かってくる打球に対してラインを作るようにグラブを置く。外からすくうように教える指導もあるようですが、点で捕る動きになるので、確実性が減るように思います。——左右の打球に対しては、どんな教えをしていますか。岩井 正面の打球と同じで、どれだけ低い姿勢でボールを見られるか。自分の左側に飛んだ打球であれば、上体を打球方向に向けて、太ももが地面と平行になるまで下げて、ヘソの前で捕る。ダイビングキャッチの場合も、低い姿勢のまま飛び込んでいく。西武台戦で、ファーストの横山が一塁線を好捕したのは、低く飛び込むことができたからです。逆シングルで捕る右側の打球も、基本的な考えは同じで、低く入れる体勢を作るようにしています。*続きは書籍でお楽しみ下さい。岩井隆(いわいたかし) 監督1970年1月29日生まれ、埼玉県出身。桐光学園高〜東北福祉大。現役時代は内野手として活躍。大学卒業後、1992年から高校時代の恩師・稲垣人司氏が監督を務める花咲徳栄高のコーチに就任。2000年10月に稲垣氏が急逝、監督に昇格する。2017年に県勢初の夏の全国制覇を成し遂げるなど、春夏13回の甲子園出場を誇る。 Amazonはこちら 関連記事 高校野球界の監督がここまで明かす!守備技術の極意|小牧憲継監督(京都国際)2025.5.8 トレーニング 高校野球界の監督がここまで明かす!守備技術の極意|野原慎太郎監督(横浜青陵)2025.4.28 トレーニング

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