【大府】野球部強化にも繋がる、学校を挙げての体育指導強化(前編)

【大府】野球部強化にも繋がる、学校を挙げての体育指導強化(前編)

中京大中京、東邦、愛工大名電、享栄の“私学4強”と呼ばれる強豪が圧倒的な強さを誇っている愛知県の高校野球だが、公立高校で長年結果を残し続けているのが愛知県立大府高校だ。これまで選抜高校野球4回、夏の選手権3回と合計7度の甲子園出場を果たしており、昨年夏の愛知大会でも準決勝に進出している。そんな愛知の“公立の雄”である大府の強さを取材した。学校を挙げての体育指導強化 大府が最初に甲子園に出場したのは1964年の夏だが、それ以降も1980年代に2回、1990年代に3回、2000年代に1回とコンスタントに甲子園出場を果たしている。現在のチームを指導するのは同校のOBでもある野田雄仁監督だ。高校卒業後は日本体育大でプレーし、2007年4月に母校に赴任。2008年には部長として夏の甲子園に出場し、2011年4月から監督を務めている。強豪というイメージが強い大府だが、野田監督の話によると野球に特化した入試制度があるわけではなく、入部している選手のレベルにはかなり幅があるという。「中学時代に硬式でプレーしていた選手もいますが、割合的には中学の軟式野球部でプレーしていた選手が半分以上だと思います。大府で私学を倒して甲子園に行きたいという生徒がいる一方で、勉強もしっかりしたいという生徒も当然います。以前は部員数も多かったですが、その当時でも色んなレベルの生徒がいるというのがうちの特徴だと思いますね」(野田監督)元々私学4強以外にも力のあるチームが多い愛知だが、近年は至学館、誉といった新興勢力も台頭している影響もあって、部員数は減少傾向にあるという。数年前は1学年30人近いことも珍しくなかったそうだが、現在は2学年合わせて35人(2年生10人、1年生25人)と強豪校にしては少ない数字となっている。そんな中でも昨年夏は愛知大会で準決勝に進出するなど結果を残しているが、その背景には学校を挙げての体育指導強化があるという。その責任者となっているのが、馬場茂校長だ。馬場校長も大府の野球部OBで、選手としては槙原博己(元巨人)とバッテリーを組み、2年夏、3年春と2度甲子園に出場。筑波大卒業後は大府の監督に就任し、1993年から3年連続で選抜甲子園にも出場している。ちなみに阪神で大活躍した赤星憲広は馬場校長が監督を務めた時の選手である。 馬場茂校長と野田雄仁監督 野球の指導現場で生かされる「検定型授業」 そんな馬場校長と野田監督が中心となって取り組んでいるのが「検定型授業」と呼ばれるものだ。体育の授業で行う全ての種目においてに動作を細かく段階に切り分け、それぞれの検定をクリアしていくことでスキルアップしていくというものだ。このような取り組みに至った経緯を馬場校長と野田監督はこう話す。「以前と比べて運動経験の少ない生徒が多いですね。バドミントンなんかでも、下からのサーブでもなかなかラケットにシャトルが当たらない生徒もいる。女子だけじゃなく、男子でも投げる動きが苦手な生徒も多いです。そんな状況で今まで通りの授業をしていても上手くいきませんよね」(馬場校長)「まずは校長の言うような体育の苦手な生徒にどう楽しさや達成感を感じてもらえるかというアプローチからスタートしました。バドミントンでも、シャトルに当たらなくてもちゃんとラケットが頭の後ろから振れたら1点、シャトルがネットを超えなくても頭の前でとらえられたら1点、みたいな感じで細かく分けて、それをクリアできると喜ぶんですよね。それまで体育がダメだダメだって言われてきた子たちですから、特にそういうのはあると思います」(野田監督) 逆にスキルの高い生徒は教える側に回ることで気がつくこともあるという。今年度からは1人に1台支給されたタブレットを使い、フォームの撮影を行うことでより効果も上がっているそうだ。ちなみにこの検定型授業の取り組みは、今年1月に行われた全国の学校で行われている体育授業の事例を発表する「第60回全国学校体育研究大会愛媛大会」において研究優良校として表彰を受けている。そしてこのような取り組みは野球部の指導現場でも生かされているという。「守備のドリルはよくあると思うんですけど、バッティングでも同じような考え方で取り入れています。さっきのバドミントンと同じように、打てなかったとしてもピッチャーのテイクバックに合わせてバットを引く動きができたら1点、ピッチャーのステップに合わせてタイミングよくステップできたら1点、みたいな形で打てた、打てなかったという結果じゃなくて、そのプロセスを細かくやるようにしています」(野田監督) 後編に続きます。(取材・文:西尾典文/写真:西尾典文・学校提供) 関連記事 【西尾東】一人も辞めなかった3年生、最後の大会も全員で!2020.6.30 学校・チーム 【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(後編)2019.10.29 学校・チーム 【享栄】全国制覇監督が現場を離れて学んだこと、気づいたこと(前編)2019.10.28 学校・チーム 【キャプテンに聞きました】石川昂弥(東邦)「センバツでは何が何でも勝つ!!」2018.12.14 選手 【東邦】AI搭載マシンを使用したバッティング練習2018.12.13 学校・チーム 【東邦】東海王者の練習は基本重視の「東邦スタイル」2018.12.12 学校・チーム 【愛工大名電】「強打」へ舵を切ったチームの地下足袋とトスバッティング2018.7.9 学校・チーム 【愛工大名電】強打も武器にした紫軍団、「バント練習はしていない」2018.7.6 学校・チーム 【至学館】グラウンドを持たない「東海王者」の練習内容と取り組み2017.7.3 学校・チーム 【至学館】恵まれない練習環境で躍進を続ける東海王者2017.6.30 学校・チーム 【中京大中京】キャプテン・伊藤康祐「全国制覇と日本一は違うと思っています」2017.3.1 選手 【中京大中京】全国一の名門校の普通すぎる練習環境。必然的に磨かれた数と効率を意識した練習(後篇)2017.2.28 学校・チーム 【中京大中京】全国一の名門校の普通すぎる練習環境。必然的に磨かれた数と効率を意識した練習(前篇)2017.2.27 学校・チーム

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