【専大松戸】名伯楽・持丸監督に訊く「投手育成論」(後編)

【専大松戸】名伯楽・持丸監督に訊く「投手育成論」(後編)

昨年はエース深沢鳳介(現横浜DeNA)を擁して春夏の甲子園に出場した千葉の強豪、専大松戸高校。チームを率いるのは、投手育成に定評がありこれまでに多くの選手をプロに送り出している持丸修一監督。そんな持丸監督の著書『信じる力』(竹書房)の編集・構成を務めた大利実氏に、改めて投手育成論について訊いてもらった後編です。取材前編はこちら > 自分のために頑張る  取材当日、新1年生の投手陣が初めてシートバッティングで登板した。打者6人と対戦。軟式出身も硬式出身も関係なく、実戦を経験させる。「1年生は『まずは体ができてから』と考える指導者も多いですが、体ができているかどうかなんてわからない。B戦でも球数に気を遣いながら、すぐに投げさせます。打たれたら、技術や体力が足りないということ。技術はアドバイスできるけど、体力は自分でやるしかない。いつも言っているのは、『トレーナーがいるんだから、最大限に活用しなさい』。気になることがあれば、どんどん質問していけばいい。遠慮する必要はないわけです」 トレーナーが組んだトレーニングメニューがあるが、どう取り組むかは自分次第。足りないと思えば、全体練習のあとに走り込む。「今の高校野球を勝ち抜くには、先発2人、リリーフ1人の3枚が必要。それでも、絶対的なエースは1人。チームの精神的支柱であり、周りから頼られる存在であること。そのためには、日頃どれだけ一生懸命に練習に取り組めるか。そういう姿を周りは見ているわけです。指導者としても、『この選手で負けたら仕方ない』と思えるピッチャーを、マウンドに送り出したいと考えています」 だからといって、周りの目を過剰に気にすることはない。持丸監督が常に言っているのは「自分のために頑張れ」だ。「最近は、『人のために頑張れ』という考えを聞きますが、自分のために頑張れない選手が、人のために頑張れるわけがない。『自分のためにやれよ!』とよく言っています。自分自身の限界を決めずに、どこまで練習できるか。その積み重ねが“自信”になっていく。指導者が、『自信を持ってやれよ』なんて言っても、やるのは選手ですから。選手が自分でやらない限りは、自信は付いていかない。1年生のときからこういう話をよくしています」 ケガにも細心の注意を払う。痛みや違和感を、スタッフに隠さず伝えること。この日も1年生に、繰り返し話していた。「いいか? 3日で治る段階で言ってきなさい。1週間かかるような痛みであれば、それはもう遅い。自分の体は、自分にしかわからない。痛みを我慢しても、何もいいことはないからな」ストライクゾーンで勝負するシートバッティングに登板した1年生左腕に、持丸監督はこんな言葉をかけていた。「今は打たれるのが当たり前だからな。ストライクゾーンにどんどん投げていけ」勝つためには、ストライクからボールになる変化球も必要になるが、ホームベース上で勝負できる球がなければ、大学やプロで活躍することは難しい。その大基本となるのが、ストレートだ。「特に左ピッチャーは、右バッターのインコースに投げるクロスファイアーがどれだけ投げ切れるか。下級生のときはまだ力がないので打たれるけど、それでも逃げずに投げ続ける。上級生になって、体に力が付いてくれば、ファウルや空振りが取れるようになっていくものです」ファウルでカウントを稼げることも、ピッチャーの大事な能力だという。昨年、DeNAから5位指名を受けた深沢鳳介は、左バッターの外のツーシーム系でファウルを取る技術を備えていた。「深沢はあそこに投げておけば、ファウルでストライクが取れる。2球投げれば、ツーストライク。あれは大きかったですね」変化球は、中学生にしても高校生にしても、スライダーを武器にするピッチャーが多いが、持丸監督が最初に教える球種はカーブだ。もちろん、そこには意図がある。「1年生には、キャッチボールのときからカーブを練習させます。腕をしっかりと振らなければ、ブレーキの利いたカーブは投げられない。抜くカーブではなく、回転をかけたカーブ。カーブを練習することで、ストレートのキレが良くなるピッチャーも結構いるものです」特に、オーバースローはカーブの習得が必須。偉大な先輩・上沢直之(現北海道日本ハム)のようなタテのカーブがお手本となる。チームは昨秋、千葉大会2回戦で敗れ、3季連続の甲子園を逃した。冬を越えて、140キロ台前半のストレートが武器の鈴木良麻、191センチの長身・竹葉洋太ら、投手陣が底上げされ、上昇ムード。春の頂点、そして夏の千葉連覇を狙う。(取材・文:大利実/写真:編集部) 関連記事 【専大松戸】名伯楽・持丸監督に訊く「投手育成論」2022.4.8 学校・チーム 普通の高校生が140km/hを投げるためのポイント!(前編)2022.3.9 トレーニング 「普通の高校生が140km/hを投げるためのポイント」(後編)2022.3.11 トレーニング 彼らが速いボールを投げられる理由(2019夏)|林優樹(近江)2019.9.19 トレーニング 彼らが速いボールを投げられる理由(2019夏)|奥川恭伸(星稜)2019.9.18 トレーニング 彼らが速いボールを投げられる理由(2019夏)|佐々木朗希(大船渡)2019.9.17 トレーニング 【球速アップ講座】彼らが速いボールを投げられる理由|奥川恭伸(星稜)編2019.4.25 トレーニング 【球速アップ講座】彼らが速いボールを投げられる理由|河野佳(広陵)編2019.5.7 トレーニング

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