【広陵】進化する名門、Instagramで「野球の楽しさ」発信

【広陵】進化する名門、Instagramで「野球の楽しさ」発信

甲子園出場回数は春26回(優勝3回、準優勝3回)、夏23回(準優勝4回)を誇り、100年以上の歴史を持つ広陵高校野球部。だが、そんな実績や歴史にあぐらをかくことなく、チームを30年以上率いる中井哲之監督は常に進化を模索している。 そんな中井監督に、今年の夏の大会のことや指導哲学などについて話を聞いた。 選手達が練習試合でも負けたくない理由「今年の代は『練習試合で負けたらいけない』という思いが必要以上に強いんですよ」そんな中井哲之監督のぼやきを受け、練習試合の戦績を聞くと「無敗」だという。昨年7月に新チームが発足して以来、取材日の6月22日まで広陵は1年間で一度も練習試合に負けていない。敗れたのは公式戦で、昨秋の明治神宮大会決勝(大阪桐蔭)と今春のセンバツ準決勝(山梨学院)のみということになる。歴史的な戦績も、その顔ぶれを見れば納得できる。「ボンズ」の愛称で知られる超高校級スラッガー・真鍋慧。2年生とは思えない貫禄と総合力を誇るエース右腕・髙尾響。類まれなリーダーシップと攻守強打でチームを引っ張る小林隼翔。俊足好打で先陣を切るリードオフマンの田上夏衣。控えにも、投手なら将来性がある左腕の倉重聡に、故障から復帰した速球派右腕の岡山勇斗、今春に台頭してきた亀岡温斗、侍ジャパンU-15代表だった1年生右腕の堀田昂佑。かの名手・井端弘和(元中日ほか)が、ワンプレーを見ただけで守備の資質を絶賛した池本真人も控える。「全試合エースを使うわけじゃないし、ベンチ入りを目指す3年生にチャンスを与えることもします。でも、リードされていても最後にうっちゃって勝つんですよね。横浜とか明徳義塾とか強いチームとの試合が雨で流れたり、負けそうだった試合が同点で終わったり。夏に向けて負けておいたほうがラクなんですけどね」今夏の広島大会でも、絶対的な優勝候補である。それでも、中井監督の口ぶりが緩まないのは、昨夏の「悪夢」が色濃く残っているからだろう。中井監督は「夏が怖くて仕方ないですよ」と言って、微笑を浮かべた。昨夏の広島大会3回戦で、広陵は伏兵の英数学館に1対2で敗れている。9回二死二、三塁の一打逆転のチャンスでラストバッターに倒れたのは、主砲の真鍋だった。小林、田上、倉重ら試合に出場していた経験者も多く残っている。だからこそ、彼らは練習試合と言えども油断することなく、勝利にこだわっているのだろう。「『野球って楽しいぜ』と発信する時代」野球部創部は1911年。甲子園出場回数は春26回(優勝3回、準優勝3回)、夏23回(準優勝4回)。その実績にあぐらをかくことなく、広陵は進化を続けている。その象徴とも言えるのが、Instagramのアカウント開設である。現時点でフォロワー数は1万7000人を超え、高校野球チームの公式アカウントとしては全国トップを独走している。中井監督はその存在意義をこう語る。「高校野球も隠す時代じゃなく、見せる時代ですから。もちろん練習ではしんどいこともありますけど、『野球って楽しいぜ』と発信する時代がきていると思います。保護者からもすごく喜ばれているんですよ」1月20日に投稿した捕手陣の練習風景を流した動画は、5万を超える「いいね」を獲得。当時を振り返る中井監督の口からは「バズった」というフレーズも飛び出した。高校野球監督歴は30年を超え、今年で61歳になったベテラン指導者とは思えない柔軟性を持ち合わせている。そんな中井監督にとって、人生観を変える出来事があった。6月に義母を亡くしたのだ。中国大会の大会中、中井監督は合間を縫って通夜に出席した。「女房の母にはすごくかわいがってもらって、応援してもらっていたんです。最後にその穏やかな顔を見て、涙が止まりませんでした。人生って涙で祝福されて始まって、最後は涙で終わるんだなと。いつかお別れする時がくるのだから、1回でもたくさん笑って、周りを笑顔にしないともったいない。母にそう教わったような気がします」この夏は、選手の笑顔をたくさん見たい。そんな思いで中井監督は指揮を執る。試合中に選手を怒鳴りつけることはないという。「修行中(練習中)は怒り方がありますけど、試合で怒っちゃいけませんよ。小中学生の試合を見ると、ちょっと監督さんが怒りすぎじゃないかなぁと思ってしまいますね。我々は選手がいるから、野球ができる。その根本的な原理を理解しないといけません」そんな指導者としての哲学を持つ中井監督の下で育った選手たちは、高校卒業後に続々と花を開かせている。なぜ、広陵の選手は伸びるのか? その謎を後編で解き明かしていきたい。(取材・文:菊地高弘/写真:編集部) 関連記事 【広陵】各ポジションの熾烈な競争、4度目の春の頂に挑む名門2019.3.19 学校・チーム 【広陵】中井監督「冬だからと特別な練習はやっていない」2019.3.18 学校・チーム 【キャプテンに聞きました】秋山功太郎(広陵)「1試合1試合を大事に戦っていきたい」2019.3.15 選手 【広陵】ナインに直撃インタビュー!これだけは譲れない「守備へのこだわり」2016.11.24 選手 【広陵】今すぐトライ!伝統高校の守備基礎メニュー2016.11.21 学校・チーム 【広陵】基礎を徹底させてチームの総合力を上げる、伝統の守備練習2016.11.15 学校・チーム

元記事リンク:【広陵】進化する名門、Instagramで「野球の楽しさ」発信