【浦和学院】モデルケースになるために、なにがなんでも結果を出したい

【浦和学院】モデルケースになるために、なにがなんでも結果を出したい

前監督の遺産を引き継ぎつつも、スタイルや采配は自分のスタイルを貫く森大(だい)監督の下、センバツ大会ではベスト4進出を果たした浦和学院。この夏に狙うのはもちろん全国の頂点だ。新しいモデルケースになるために「なにがなんでも結果を出したい」と森監督は話す。急成長した捕手、高山維月 今春のセンバツ大会31試合で飛び出した本塁打数は18本。そのうち11本は優勝した大阪桐蔭が放ち話題になったが、浦和学院も4本を放ちパワーを見せている。冬場に睡眠時間を確保したことで選手の肉体改造が進み、パワーアップにつながった。なかでも急成長を見せたのは、5番・捕手の高山維月である。大会開幕戦となった大分舞鶴戦では、大会第1号となるバックスクリーンへの特大本塁打。鋭い二塁送球でもアピールし、一躍ドラフト候補の仲間入りを果たした。筆者は昨秋の浦和学院の試合を見ているが、高山の印象があまり残っていなかった。エース左腕の宮城誇南、攻守にハイレベルな遊撃手の金田優太、ツボにはまった打球は超高校級の鍋倉和弘といったタレントの陰に隠れた感があった。秋の公式戦通算打率.419と結果は残していたものの、高山本人もこの時点では「大学はどこへ行こうかな?」と考えていたという。一冬越えて身長180センチ(2センチアップ)、体重71キロ(5キロアップ)と肉体が変わると、パフォーマンスも目に見えて変わってきた。高山は言う。 「筋力が増えたことで、『力強く振ろう』と力まなくても勝手に強さが出るようになって、打球が飛ぶようになりました」スローイングも体重移動を見直したところ、ボールの勢いが見違えてよくなった。プロスカウトからの注目度もうなぎのぼりで、森大監督は「センバツ後も成長スピードが止まらないので、金田より評価が高まるかもしれません」と語る。まだフィジカル的に成長の余地を残しており、本人も「プロに行きたい」と金田とともにプロ志望届を提出する意向を示している。選手に言い続けた「夏が集大成なんだよ」センバツベスト4と躍進したディフェンス面の立役者は、何と言ってもエースの宮城だ。初戦で13奪三振の快投を見せるなど、3試合に先発してキレのあるボールを武器に鮮烈な投球を見せた。ところが、近江との準決勝では宮城は登板回避。試合後に森監督は「今日は宮城を使わないと決めていた」とコメント。その決断には賛否両論が起きた。森監督はあらためて当時の真意を語る。「高校野球は将来につなげるためのカテゴリーという考え方。宮城が前年夏から秋にかけて肩・ヒジのコンディションがよくなかったこと。いろんな要因がありましたが、一番は『すべては夏のため』です。春に勝っても、夏の甲子園に行けなければファンの記憶は夏の甲子園に出たチームに塗り替えられる。だから選手には『夏が集大成なんだよ』と言い続けていました」宮城を起用しなかったとはいえ、もちろん勝負を捨てたわけではない。代わりに起用したのは、森監督が「この1年でもっとも成長した」と評価する浅田康成と芳野大輝のふたり。とくに右腕の浅田は先発して4回を1失点に抑えた。それでも浅田本人は「甲子園では全然力を出しきれませんでした」と悔しそうに振り返る。冬場の練習で投球練習用の棒を振り、フォームの安定性を追求してきた。最速144キロに達した快速球を武器に、好不調の波が小さくなってきている。宮城やリリーフも務める金田の負担を減らせれば、浦和学院の夏の甲子園はぐっと近づく。浅田は不敵な笑みを浮かべて、こう宣言した。「夏は先発した試合では、絶対に完封します。宮城や金田の助けを借りずに、ギラギラと投げていきます」なにがなんでも結果を出したい「新生・浦和学院」の進化は肉体的、技術的な成長だけに留まらない。高山が「やらされる野球ではなく、自分で考える野球になってきた」と語るように、選手個々が自発的に考え、行動するチームになりつつある。森監督は今春の関東大会での出来事をうれしそうな表情で語った。「明秀学園日立戦でキャプテンの八谷(晟歩)がセーフティバントを決めたんですが、その後も足の速い小林(聖周)の打席で八谷が『セーフティ、セーフティ!』とアピールしてきたんです。よほど確信があるのだなと、サインを出したところ小林が決めてくれました。ベンチのなかで選手とコミュニケーションを取りながら、戦っていけるチームになってきました」春のセンバツでベスト4に進出したといっても、激戦の埼玉を勝ち抜くには並外れた実力や強靭な精神力が必要になる。夏の大会に向けた守備練習終了後、バックネット付近に選手を集めた森監督は、こう語りかけた。「守備で大事なのは、躊躇しないこと。失敗を恐れないこと。守備こそ攻撃。その意識が大切だと思う。文字通り守りに入るのではなく、超攻撃的にいこう」攻守とも「超攻撃的」がキーワード。その先に全国の頂が待っていると信じている。森監督は言う。「僕は高校野球界を変えたいわけではありません。でも、こんなやり方でも勝てるんだと全国で実証して、ひとつのモデルケースになりたいと考えています。だから、なにがなんでも結果を出したいんです」新時代の旗手になるために――。その壮大な挑戦が始まっている。(取材・文:菊地高弘/写真:編集部) 関連記事 【浦和学院】若き指揮官がもたらした変革、伝統校に加わった「新たな色」2022.7.18 学校・チーム 『監督からのラストレター』浦和学院高校/森士監督2021.3.15 学校・チーム 【浦和学院】3食を共にして掴み取った5年ぶりの夏甲子園2018.10.23 カラダづくり 【浦和学院】森士監督が考える「食」の今と昔2018.10.15 学校・チーム 【2018甲子園注目選手#25】蛭間拓哉(浦和学院)2018.8.11 選手 【浦和学院】森士監督に聞く「投手育成術」2017.7.11 学校・チーム 【浦和学院】名門野球部のナツタイ直前練習に密着!2017.7.10 学校・チーム

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