悩む君たちへ。ハングリーな元選手たちがZoomでメッセージ

悩む君たちへ。ハングリーな元選手たちがZoomでメッセージ

5月25日にオンラインツール「Zoom」による「緊急企画 世界の野球経験社会議」が行われました。元ロッテ投手で、海外プレー経験のある小林亮寛さんら3名が企画し、渡辺俊介さん(元ロッテ)や古木克明さん(元横浜)なども参加。動機や経緯はさまざまだが、MLB挑戦や、プレーヤー活動継続の道を求めて海外で戦った計20人のスピーカー(経験者)のメッセージに、100人の閲覧者が耳を傾けました。その様子をレポートします。「進路に悩む高校3年生、大学4年生の耳にも届いてほしい」NPBを経て海外5カ国でプレーした小林亮寛さんがその思いを胸に、国内外の独立リーグ経験者の長坂秀樹さん、根鈴雄次さんと緊急Zoom会議を企画した。オンラインで全国の野球仲間に声をかけたところ、計20人の海外野球経験者が“集合”。アメリカ在住でメジャーリーガーを目指す19歳の根岸辰昇さんが現在の野球環境を話すなど、国境を越えた熱いトークが交わされた。この会議、SNSを使っての直前告知だったにもかかわらず、開始30分で視聴者が最大許容数の100人に。休校中の学生や、保護者が自由に閲覧できるよう「オープン設定」にしたこともあり、予想を上回る反響となった。小林さんは「(仲間同士の)オンライン飲み会を誰かに聞いてもらおうというくらいの気持ちでしたが、多くの人に注目していただきうれしかったです」と2時間の会議を振り返った。 プロ未勝利の小林さんら、挫折を味わった20人のフリートーク 新型コロナウイルス感染症の拡大で甲子園大会や、大学野球選手権大会が中止になった今、この会議で小林さんが一番伝えたかったのは「道は自分で切り拓くもの」というハングリー精神だ。PL学園からドラフト6位でロッテに入団。ケガもあり、5年間で一度も1軍経験がないままプロ野球を退団した。中日の打撃投手を経て、再び現役選手に挑戦したのが26歳。アメリカ、台湾、メキシコ、韓国で活躍の場を求めてプレーし、納得した形で35歳のときに引退を決めた。この日集まったメンバーも、小林さんと同じように挫折を何度も繰り返し、立ち上がりながら野球を追い求めた元選手たち中心だった。 「大丈夫。休みは体が大きくなれるチャンスだよ」(根鈴氏) 長坂さんは「海外に行くと、野球に挫折した人ばかり集まっていた。野球が好きなら、その気持ちは残していてほしい。諦めないでほしい。多くの選手を見てきた中で(野球が)うまくなるのは25歳からだと思っている」と持論を交えてエール。米・エクスポズ傘下3Aまで昇格した根鈴さんは「僕は家庭の事情で高校野球ができなかったけど、10代で海外に行って法政大学に23歳で入学。7季プレーしました。いま選手たちはコロナ禍で不安だと思うけど、休んでも全然大丈夫。体が大きくなれるチャンスだよ」と励ましの言葉をかけた。その他の参加者からも「野球が離れたからこそ、野球に戻ろうと思った」、「道は自分で取りに行く。今がそのチャンス」、「映画『オールドルーキ―』の日本版を目指した。年齢は関係ない」など、野球ができない学生たちの現状を思い、経験に基づいた助言が送られた。社会に出たら「レール」はない。誰にでもその時が来る 緊急Zoom会議を企画したコビーズ・ベースボールワークアウト代表の小林亮寛さん。次回の予定はKOBESフェイスブックにて。 主宰の小林さんは「僕たちはダルビッシュ投手や、大谷翔平投手のような華やかな成功例を話すことはできないけれど、目の前の目標が突然なくなったときの気持ちや、底辺からはい上がっていく方法、経験談なら話せます。学生選手たちは、今までは学校という敷かれたレールの上を通ってきたと思うけど、社会に出たらレールはなくなる。遅かれ早かれそういう時が誰にでも来ます。今日のメッセージが、進路に悩む野球選手たちの豊かな人生のため、視野を広げるきっかけになってくれればうれしいですね」と話した。今後も、審判、トレーナー、球団スタッフ、メディアなど、海外野球に関わって働く経験者とのZoom会議を計画している。 この日のスピーカー(主な球歴) ・MC:藤澤翼(DJツバサとしてプロスポーツのスタジアムDJで活動)・小林亮寛:PL学園。ロッテ、中日(打撃投手)、アメリカ、カナダ、日本独立リーグ、台湾、メキシコ、韓国。・長坂秀樹:東海大三―東海大。アメリカ、日本独立リーグ。・根鈴雄次:都新宿山吹―法政大。米エクスポズ傘下3A、オランダ、メキシコ、カナダ、日本独立リーグ。・田中聡:尽誠学園―法政大。米独立リーグ、日本ハム、阪神。・南容道:法政二―法政大。米レッドソックス傘下、イタリア、韓国、社会人野球。・古木克明:豊田大谷。横浜、オリックス、アメリカ。・上野啓輔:習志野。アメリカ、日本独立リーグ、ヤクルト。・金本浩司:広-中央大学。シダックス、アメリカ、キューバ。・井野口祐介:桐生商―平成国際大。日本独立リーグ、アメリカ、ニカラグア、メキシコ。・田久保賢殖:八千代西。社会人野球、日本独立リーグ、アメリカ、オーストラリア、カナダ、チェコ、オーストリア。・宮崎慎一:沖学園。社会人野球、フランス。・坂梨広幸:福岡中央―山口大。オーストラリア。・杉尾拓郎:熊本開新―九州共立大。日本独立リーグ、社会人軟式野球、オーストリア、ドイツ、台湾。・小野真悟:東海大仰星。社会人野球、日本独立リーグ、アメリカ、メキシコ、ドイツ、コロンビア、オーストラリア。・根岸辰昇:慶應義塾高。アメリカ留学中(視聴者として参加)・渡辺俊介:国学院栃木―国学院大―新日鐵君津。ロッテ、米レッドソックス。その他、元プロ野球選手 (構成/樫本ゆき) 小林さんは引退した中学3年生のための「福岡県中学硬式野球育成会」の代表も務め、子どもたちが野球を楽しいと思える練習会の場を作っている(2018年12月撮影)

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